東京大学HMC企画研究「学術資産としての東京大学」研究会 「古くて新しい学術資産―東京大学の埋蔵文化財―」
開催趣旨
「東京大学という近代的組織は,東アジアの伝統を基盤とする」という文は,単なる比喩表現ではない.東京大学と呼ばれる近代的建築群の下には,弥生時代から近世の加賀藩邸に至るまでの遺跡が横たわっており,文字通り東京大学を地下から支えてきた.それらの埋蔵文化財は大学創設以前に遡る遺物であるものの,学術資産とみなされるようになったのはむしろ近年に至ってからである.
東京大学埋蔵文化財調査室は,本学の創立100周年を記念する「再開発」事業にともなって1983年に設立された.翌84年には学内各所で発掘を開始し,今日に至るまで30年以上に及ぶ調査を行ってきた.それによって発見された近世藩邸の遺物は,近世考古学という学問分野を開拓するとともに,他大学においても構内で発掘調査を行う趨勢を起こした.近年では,学内史跡の保存や教育発信に対して気運が高まりつつある.2013~14年に総合図書館前広場で行われた公開発掘調査は,発掘現場前に掲示された溶姫御殿の遺物に関するパネルとともに,いまだ記憶に新しい.
かくして,東京大学創設以前から地下に保全されていた埋蔵文化財は,発掘され,研究され,保全され,発信されることで学知の共同体の一角をなすに至った.それらの遺物は,大学に過去に関する知見を与えると同時に,本郷キャンパスに行き交う人々の過去との向かい方を変容させつつある.つまり,埋蔵文化財が東京大学の学術資産であるのは,それらが偶然敷地内に埋まっていたことだけによるのではない.
そこで「学術資産としての東京大学」第四回研究会では,埋蔵文化財という古くて新しい学術資産と東京大学との重層的な関係を二つの観点から検討する.まず堀内秀樹(埋蔵文化財調査室准教授)が,近世考古学の立場から,自身が携わってきた東大構内発掘調査の経緯とそこで見出された埋蔵文化財の学術的価値について講演する.この講演に対し松田陽(人文社会系研究科准教授)は,文化資源学の立場から埋蔵文化財の保全と情報発信についてコメントを加える.
- 日時:2019年3月8日 12:30-15:00
- 場所:東京大学本郷キャンパス 情報学環福武ホール内 史料編纂所大会議室
- 入場無料・事前申込不要
プログラム
- 12:30-13:30 堀内秀樹准教授講演
- 13:30-14:00 松田陽准教授コメント
- 14:00-15:00 全体討論