国連平和活動において性的暴力が許容されている背景:社会学的行動科学の観点から
- 日時:2019年4月12日(金)17:00 - 19:00
- 場所:東京大学 東洋文化研究所3階 第1会議室(入場無料 事前登録不要)
- 報告者:Dr. Marsha Henry(外国人研究員)、キハラハント 愛(「人間の安全保障」プログラム・准教授)
- 使用言語:英語(一部 日本語)
1990年代より国連平和活動における性的暴力・搾取の問題が公に報道されてきた。21世紀に入ってから国連はこの問題に対処して来ており、特に近年はその撲滅に力を入れてきた。内部規律が整備され、新しい政策が導入され、既存の規律・政策が見直されてきた。すべての要員に性的暴力・搾取はどのような状態でも禁止されていること、また、この規律を破ると罰則があることが通達された。性的暴力・搾取を黙認する上司も罰せられることが明らかにされた。しかし性的暴力・搾取の報告は後を絶たない。何が問題なのか。本セミナーでは、この問題の性質と規模、また、国連がこれに対処するためにどのような規律や責任追及の制度を導入してきたのかを紹介し、国連が性的暴力・搾取の撲滅のために取っている諸策の前提とされていることは適切なのかを問う。特に、次の3つの問題について議論する。
- 平和活動の分野・機関:力の構造、プロジェクトとシステムとしての平和維持の概念の枠組みを反映するものとしての関連機関・政策・法のマッピング
- 要員研修のギャップ:研修教材やカリキュラムに、セクシュアリティ、性的健康、自己の保護、同意、性的・ジェンダー平等にまつわる文化についての議論が抜けていること
- ジェンダー関係と軍隊において予見されること:軍隊におけるサブカルチャー、組織的な要求、既存のジェンダー的・職業的な役割、並びにジェンダーと軍事化との関係性
(参考資料)
- Henry, M. (2013). "Sexual Exploitation and Abuse in Peacekeeping Missions: Reconceptualising Agency and Gender Relations", in A. Phillips, K. Wilson and S. Madhok, Gender, Agency, and Coercion: Thinking gender in transnational times, London: Routledge, pp.122-142.
- Kihara-Hunt, A (2017). "Addressing Sexual Exploitation and Abuse: The Case of UN Police - Recommendations", Journal of International Peacekeeping, vol. 21, issue 1-2, p. 62.