オープンセミナー

「右」も「左」もない言語と言語類型論

  • 日時:2021年12月17日(金)17:30-19:30
  • 場所:Zoomオンライン開催
  • 報告者:長屋 尚典(東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
  • 申込み:12月15日(水)締切で、下記の様式でお申込みください。
  • 主催:東京大学ヒューマニティーズセンター

世界には6,000を超える言語が存在しますが、その構造は言語ごとに大きく異なります。たとえば、「怪獣が (S) ビルを (O) 破壊した (V)」という内容を伝えるために、日本語のようにSOV語順をとる言語もあれば、英語のようにSVO語順をとる言語もあります。さらにVSO、VOS、OSV、OVSといった語順も存在します。ばらばらです。しかし、完全に不規則というわけでもありません。実はSOV言語とSVO言語だけで世界の言語の80%以上を占めており、人間の言語に「SがOに先行する」「VとOが隣接する」という傾向があることが分かります。このように世界の言語を幅広く観察することによって人間言語の特徴を解明する言語学の分野は言語類型論と呼ばれます。

このオープンセミナーでは、そのような言語類型論の中でも空間参照枠の言語類型論に注目します。空間参照枠とは、ある物体の位置を物体とは別の参照物から記述しようとするときに用いる発想法のことを指します。たとえば「男」という物体の位置を「木」という参照物について表現しようとするとき、「男が (発話者からみて) 木の左に立っている」のように「右」や「左」を用いて表現することができます。この発話者からみた「右」や「左」という発想法を相対的空間参照枠といいます。

相対的空間参照枠は日本語や英語など我々のよく知っている言語で頻繁に用いられ、人間の言語に普遍的な現象であるように思われます。しかし、報告者が研究しているラマホロット語 (インドネシア共和国フローレス島の言語) では、この相対的空間参照枠を使うことができません。「右」や「左」を意味する単語もなければ、それを用いて表現する発想もありません。

それでは、「右」も「左」もないラマホロット語ではどのように空間を表現するのでしょうか。今回のセミナーでは、言語類型論とラマホロット語を話す人々の暮らしも紹介しながら、この問題について考えてみたいと思います。