【著者が語る】
『扉の向こうの帝国 ―「イースタン・バンク」発生史論』
- 日時:2021年4月28日(水)18:00-20:00
- 場所:Zoomオンライン開催
- 報告者/著者:川村朋貴(奈良県立大学地域創造研究センター)
- ディスカッサント:大久保翔平(東京大学大学院人文社会系研究科)
- 申込み:4月26日(月)締切で、下記の様式でお申込みください。
- 主催:東京大学ヒューマニティーズセンター
本書が対象とする19世紀という時代は、ロンドンに本店を置くイギリス系国際銀行が数的に着実に増加し、1830年代にはオーストラリア、カナダ、西インドに、1850年代にはアジア全域に、さらに1860年代から70年代においてはラテンアメリカ、南アフリカ、ニュージーランドなどに進出する時代であったといえます。そして、その進出先は、多くの場合、イギリスの植民地あるいはその強い影響下にある地域でした。少なくともこの時代におけるイギリス国際銀行業は、イギリス帝国主義の公式・非公式権力と完全なる相関関係にあったと考えて間違いありません。本書は、アジア向けのイギリス系国際銀行群(イースタン・バンクと総称)が1830年代から1880年代にかけて生成し発展する過程を明らかにし、その分析からイギリス帝国膨張の力学を導き出そうとする内容となっています。
本書では、イースタン・バンクの代表的事例として、オリエンタル銀行、マーカンタイル銀行、チャータード銀行(現スタンダード・チャータード銀行)、香港上海銀行(現HSBC)等に注目しています。これらの諸銀行は、業務全体の中で外国為替取引を主体とする国際的商品流通部門の割合が極めて高かったという特徴から、「東洋為替銀行(Eastern Exchange Banks)」と呼ばれていました。
本セミナーでは、本書の論点を簡単に紹介し、それによって導き出された諸問題をディスカッサントやセミナー参加者との対話のなかで再考しようと思います。そして、時間的に余裕があれば、極度に蛸壺化されたヒューマニティーズの諸課題にまで議論を拡げていければと考えています。
本セミナー関連書誌情報
川村朋貴『扉の向こうの帝国 ―「イースタン・バンク」発生史論』
(ナカニシヤ出版、2020年10月公刊)
川村朋貴、関戸一平『英領インドにおける「株式会社」の地理学』
(Humanities Center Booklet シリーズ Vol. 5、2020年9月11日発行)