中世の『日本書紀』解釈における思想変動──一条兼良『日本書紀纂疏』を中心に
- 日時:2021年11月26日(金)17:30-19:30
- 場所:Zoomオンライン開催
- 報告者:徳盛誠(東京大学大学院総合文化研究科講師)
- 申込み:11月24日(水)締切で、下記の様式でお申込みください。
- 主催:東京大学ヒューマニティーズセンター
昨年2020年は、720年に『日本書紀』が完成して1300年に当たる記念の年でした。『日本書紀』は、日本という国とその統治の来歴を、世界の始まりから叙述した著作として、同時期に成立した『古事記』とともに、現代の日本でも広く知られています。他方、比較的知られていないのは、この書物を重視し解釈する試みが早くからなされていて、長い年月にわたってさまざまな解釈や注釈が繰り返され、現代に至っているという事実です。『日本書紀』は八世紀に完成した状態そのままに保存され、二十一世紀まで運ばれてきたのではなく、むしろテキスト的、解釈的な変転を繰り返すことで再生してきたのです。私たちが手にする現代の『日本書紀』注釈書もまたその遍歴の先端にあるといえます。
『日本書紀』をめぐるこうした解釈の長い流れはそれ自体、古代を起点として現在なお継続している一つの思想史とみることができます。この思想史は各々の時代を生きた解釈者たちの思想や世界観、さらにその変動のありようを、テキストに即して具体的に検証できるという顕著な特質をもっています。今回は、十五世紀半ばに書かれて一つの画期をなした、一条兼良の『日本書紀』「神代」の注釈書(『日本書紀纂疏』)を中心として、思想史上重要な一つの局面を、テキスト解釈の変容を通じて考えたいと思います。