死者・動物・環境 ── 津島佑子『寵児』のクィア・エコフェミニズム
- 日時:3月19日(火)16:00 ‐ 18:00
- 開催形式:ハイブリッド開催
- ①現地参加:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1
キャンパスマップ - ②Zoomオンライン参加
- ①現地参加:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1
- 発表者:村上克尚(東京大学大学院総合文化研究科 准教授)
- コメント:木村朗子(津田塾大学学芸学部 教授)
- 主催:東京大学ヒューマニティーズセンター
- 現地参加申込(3/17〆):https://forms.gle/VbqMNCL3oZsgJKDH9
- Zoom参加申込:https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZcucuysrTgpGtNY4ju6r9zQGvmxlMSlR2Iw
概要
津島佑子の『寵児』は、一九七八年に河出書房新社から書下ろしとして出版された。想像妊娠という女性の身体に深く根ざした仕掛けを用い、第一七回女流文学賞を受賞した本作は、津島の「初期の代表作」という位置を与えられてきた。
中立的な「文学」を装う「男流文学」への対抗物としての「女流文学」(のちに「女性文学」)という枠組みは、重層的な本作の一面に間違いなく重要な光を当てる。しかし、本作の主人公を動かす欲望が「女性」という概念のもとに集約されるかについては、ジェンダー論を経て、クィア・スタディーズが隆盛するいま、改めて問われて良いだろう。加えて、想像妊娠とは、女性の身体に関わる症候であると同時に、可視的なものと不可視的なものとの紐帯を証言する現象でもある。ここには、可視化への強迫観念に彩られた近代を超えた、不可視的なものを孕んで成立する世界への関心を読み取ることもできるはずだ。
本発表では、『寵児』に対する「女性文学」という従来の読みの枠組みを、エコフェミニズム、あるいはクィア・エコフェミニズムのほうにずらしていきたい。女性主人公のクィアな欲望に呼応して、死者・動物・環境という三つの潜在的な領域が呼び寄せられるという見通しのもと、『寵児』の新たな読みを探っていく。
村上による発表の後、津島の後期文学に注目して多くの重要な論文を発表してきた木村朗子とのディスカッションを行なう。本セミナーが津島文学への良き案内となることを願っている。
関連書籍
- 津島佑子『津島佑子コレクション』全5冊、人文書院、2017-2018年
- 村上克尚『動物の声、他者の声 ── 日本戦後文学の倫理』新曜社、2017年
- 木村朗子『紫式部と男たち』(文春新書、2023年)
- 木村朗子『百首でよむ「源氏物語」』(平凡社新書、2023年)