近世帝国としての大清帝国──ヨーロッパとの比較から
- 日時:11月22日(金)17:30 - 19:30
- 開催形式:Zoomオンライン開催
- 報告:杉山 清彦(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授)
- コメンテーター:古谷 大輔(大阪大学大学院人文学研究科・外国語学部教授)
- 主催:東京大学ヒューマニティーズセンター
- 申込(参加無料・要登録):
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZcpdeitrzosHddDQw_zv_uIEw9NUsl1VNWP
概要
清、といえばどのようなイメージが浮かぶだろうか。多くの場合、「ラストエンペラー」から想起される、「中国最後の王朝」というものかもしれない。しかし、この王朝に君臨していたのは、まさにその愛新覚羅溥儀という特異な姓名が示すとおり、漢人(漢民族)ではなく、東北アジアに出自するマンジュ(満洲)人だった。では、マンジュ人が建設し、広大な範囲に及ぶモンゴル・チベット・東トルキスタンと、膨大な人口を抱える中国内地とにまたがって広がったこの帝国は、どのような構造をとり、どのような特徴をもっていただろうか。
今回のセミナーでは、この王権を「最後の中華王朝」としてではなく、「大清という国号を称する、マンジュ人が支配した近世の一帝国」として「大清帝国」と捉え、その構造と特徴について、比較史の観点から考察する。そこで浮かびあがるのは、儒教を奉じ文官官僚が皇帝の手足となって治める一元的支配の姿ではなく、複数の文化圏にまたがる領域を多面的な君主が統合する複合的・個別的な支配の姿であり、それは先行する明王朝よりも、同時代のヨーロッパや西アジアの王権と多くの共通点を有しているといえる。そこで、近年、一元的・固定的な像から複合的・可塑的な像へと理解が塗り替えられている近世ヨーロッパの国制との比較を通して、新しい角度から帝国の姿を照らし出したい。
コメンテーターとして、北欧を中心に近世ヨーロッパの国制理解の刷新に取り組む古谷大輔・大阪大学教授を招き、ユーラシアの東西を俯瞰した討議を試みる。
関連書籍
- 杉山清彦『大清帝国の形成と八旗制』名古屋大学出版会,2015.
- 岡田英弘編『清朝とは何か』(別冊環)藤原書店,2009.
- 古谷大輔・近藤和彦編『礫岩のようなヨーロッパ』山川出版社,2016.
- 佐川英治編『君主号と歴史世界』山川出版社,2023.
- 岩井淳編『複合国家から読み解く世界史──「国民国家史観」再考』山川出版社,2024(12月刊)
- 『思想』No. 1203(特集 帝国論再考),2024.